【1550】 ○ サム・ワナメイカー 「刑事コロンボ(第40話)/殺しの序曲」 (77年/米) (1978/05 NHK) ★★★★

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天才犯人とコロンボの「天才」の成り立ち方の違い、「知恵」の発揮どころの違いを浮き彫りに。

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殺しの序曲―刑事コロンボ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)』「特選 刑事コロンボ 完全版「殺しの序曲」【日本語吹替版】 [VHS]」セオドア・バイケル

刑事コロンボ 殺しの序曲 1.bmp 会計事務所を経営するオリヴァー・ブラント(セオドア・バイケル)は、共同経営者で親友のバーティ・ヘイスティング(ソレル・ブーク)とともに、「シグマ協会」という知能指数がトップから2パーセントという天才だけで構成されるクラブに所属していたが、オリヴァーが会計事務所の客の金を横領していることに気づいたバーディから、「おまえは泥棒だ!私は、おまえの正体をあばきたててやる」と言われ、拳銃でバーティを殺害する―。

左から セオドア・バイケル/ドリー・トムソン/ソレル・ブーク

 第6シーズンの最終作で、相手は「天才」だけに、レコードプレイヤーのオートリターン機能を使った凝りに凝った仕掛けでアリバイ作りをしますが、やや凝り過ぎの感じも。そのレコードプレイヤーと同じ機能のものが犯人の自宅にあり、コロンボが自宅を訪ねた際に、犯人の奥さんがレコードをかけてくれてると言って、コロンボがその機能に気付いたのは、ややラッキーに助けられた感じもします。

刑事コロンボ 殺しの女局1.jpg コロンボが作中で、自分の人生を振り返って「あたしはどこへいっても秀才にばかり出会ってね。お分かりでしょう。学校にも頭のいい子は大勢いたし、軍隊に初めて入った時にも、あそこにもおっそろしく頭のいいのがいましたよ。ああいうのが大勢いちゃ、刑事になるのも容易じゃない、と思ったもんです。あたし考えました。連中よりせっせと働いて、もっと時間をかけて、本を読んで、注意深くやりゃ、ものになるんじゃないかって」と犯人に語る場面があり、自分のトリックを見破ったことでコロンボを自分と同質の「天才」だと見做す犯人に対し、コロンボの「天才」の形成のされ方が犯人のそれとは異質であることを自らわざわざ説明しているのが興味深いです(「あたしはこの仕事が心底、好きなんです」というセリフもある)。

 また更に、状況証拠の積み重ねでしかないところで、(このシリーズでよくあるパターンだが)犯人を自白に追い込むことで事件の決着を図る際に、相手の「自分は天才だ」という自負心を逆手にとって、犯人に自ら犯行の手口を語らせるといったことをしており、犯人の幼稚さにやや呆れはするものの、「知恵」の発揮のしどころが、これまた犯人とコロンボでは異なることを示唆していて、そうしたコロンボと「単なる天才」との違いを浮き彫りにしたという意味では、意外と奥深い作品でした。

"The Collector " ('65/UK)
殺しの序曲.jpgThe Collector.jpg「刑事コロンボ(第40話)/殺しの序曲.jpg コロンボに事件解決のヒントを与えてしまう犯人の奥さん役は、ウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」('65年/英・米)で、コミュニケーション不全の青年(テレンス・スタンプ)に誘拐・監禁される美大生を演じてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたサマンサ・エッガーで、異常男に虐められるその虐められぶりが秀逸でしたが、それから12年を経て、今度は夫を精神的に苛めているような役柄を演じているのが興味深いです。

ジェイミー・リー・カーティス2.jpg殺しのじょきょく.jpg その他に、コロンボがカフェにドーナッツを食べながら入ってくるとそれを取り上げてしまう、つっけんどんなウェイトレス役で、後に映画「トゥルー・ライズ」('94年)などに主演する、映画デビュー前のジェイミー・リー・カーティスがちょこっと出演していて(怖そうなお姉さんという感じ)、彼女は本国でこの「殺しの序曲」の2年前に放映された第32話「忘れられたスター」で犯人を演じたジャネット・リーの娘でもあり、このチョイ役出演はその繋がりなのか?

columbo swan song.jpg 被害者バーティ役のソレル・ブークは、第24話「白鳥の歌」では、ジョニー・キャッシュ演じる犯人である歌手のマネージャー役で出ていました。

第24話「白鳥の歌」

「刑事コロンボ(第40話)/殺しの序曲」●原題:THE BYE-BYE SKY HIGH I.Q.MURDER CASE●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:サム・ワナメイカー●製作:リチャード・アラン・シモンズ●脚本:ロバート・マルコム・ヤング●音楽:ボブ・プリンス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/セオドア・バイケル/ソレル・ブーク/サマンサ・エッガー/ケネス・マース/バジル・ホフマン/ハワード・マクギリン/キャロル・ジョーンズ/デリエ・トムソン/フェイ・デウィット/ジョージ・スペルダコス/キャスリーン・キング/ミッツィ・ロジャース/ジェイミー・リー・カーティス●日本公開:1978/05●放送:NHK総合(評価:★★★★)

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This page contains a single entry by wada published on 2011年10月10日 00:29.

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